著作・管理・編集:勇者カカキキ
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<レインフォース─ フォーネリアス戦記 ─>
─ エンシェント・エルフ遺跡編1 ─
*プロローグ*
その遺跡はエンシェント・エルフ時代の古い古い遺跡。だが、数千年を経た今も遺跡内部の罠は健在で数々の罠が侵入者を阻み、また侵入した者は二度とその姿を見せる事が無いという。
ある説によると、その遺跡に眠る財宝の中に、どんな願いも一度だけ叶える事が出来る秘法が眠っているという。
だが、所詮は噂は噂。誰一人として帰ってこない遺跡に纏わる一つの逸話に過ぎない。
そう誰一人として真実を見て語る者が居ないのだから……。
冒険者ギルドが定める基準で、その危険度は「赤・五」の超危険指定されている。故に、世間一般にその遺跡の情報は公開されていない。
*2*
新種の症例と数えられそうな勢いの万年貧乏の冒険者カル・ディアーズ……と、その相棒のステア。
黒髪黒瞳、顔立ちもハンサムと言えなくもないが、シャツとジーンズの普通の格好で目立たない。そんな何処にでもいる格好の青年が、魔導士である事など伺い知る事は出来ないだろう。武器を携行せず、ベルトには、動きを邪魔しない程度に幾つかの袋とロープを吊るしている。
冒険者としての活動も長く、豊富な知識を用い、冒険者ギルドが斡旋した仕事、それ以外の依頼も幅広くこなす。ステアを相棒にしてからは、少々高難度の依頼もこなしてきている。
だが、カルが万年貧乏となる訳は、出会った人物がいけなかった。『常に笑顔で借金取立と貸付を行う悪魔』と名前を出す事すらはばかれる……そんなカルが苦手とする人物との付き合いの長さが起因していると思われる。
だが、その『悪魔』も多忙で不在。ともなれば、その間に依頼を数多くこなし借金を完済出来る額まで稼がないといけない。
その苦労を知る一部ギルド職員から、たまに割りの良い仕事を斡旋して貰う事がある。が、それもステアに、『お近付き』になりたい下心である事をカルは知っている。
そんなステアは、腰まで伸びた長い白髪を中程で青リボンで縛り纏め、瞳はまるでルビーの様な真紅の輝きを宿す。白い肌、白い衣服鎧、白のブーツと白一点で、常に無表情であるが、令嬢を思わせる顔立ちが目を引く。愛用の刀を腰に差した剣士であり、驚くべき事は、伝説や噂として語り継がれる吸血鬼であるという事だろう。
過去にカルに命を助けられた経緯から、恩義に報いようとカルに付き従い、既にその付き合いも長い。
「カル。どうやら依頼があるようですが……。依頼人は貴族との話です」
「貴族ねぇ。報酬は?」
「依頼人より後で直に渡されるそうです。前金も一切無しですね」
「どうせ、指輪を失くしたから探してくれーってな依頼だろ? それに前金無しじゃ話にならないな」
「相当な名家らしいですよ。バルドル有数の貴族で、その総資産は一千ヴィンス以上とも言われているらしいわ」
「前言撤回。報酬はどうであれ金持ちに近付くチャンスだ。これを機にさらに高額報酬の依頼も舞い込むかも知れないな……とりあえず引き受けて見るだけ引き受けてみようぜ? で、どんな依頼なんだ?」
「依頼人に直接当たって聞いて見てくれ……との事です」
「……なるほど。とりあえず依頼人に会ってみるか」
話によると、冒険者ギルドの外で既に依頼人が待っているらしい。それも二人組みらしい。
外に出てそれらしい二人組みを探すが、どうみても年端もいかない少年と少女が二人。それ以外には誰も居ない。
恐る恐るカルがその子供達に声を掛けてみる。
「い、依頼人ってもしかして君達?」
「もしかして、おじさん達が依頼を引き受けてくれたの? 私はフローラ、こっちが弟のダン……まぁ、皆ダンゴと呼んでいますわ」
カルに気付いた少女がそう答える。インテリなメガネを掛けたドレス姿の賢そうな少女と、少々肥満気味で両手に大きな飴菓子で完全武装の少年が興味深げに近付いてきた。
「俺はカル。で、こっちがステアだ……それとだな、俺はまだおじさんじゃ──」
「おじちゃん。何か甘い匂いがするぅ」
「ダンゴ。貴方は黙ってなさい! お願い私達の友達を救って欲しいの。出来る限りの報酬は小切手で用意しますから!」
小切手。──それはまさに金持ちだけの特権。カルはその一言を聞き逃さなかった。
「分かった分かった。で、その友達は何処に行ったか見当はついてるのか?」
「うん、このメモが友達の部屋に残されていたの」
右手で強く握っていたのだろう、クシャクシャの紙を伸ばして目を走らせ読み始めたカル。
──エンシェント・エルフ遺跡へ行きます。みんなは、心配しないで下さい。ジーク。
と簡潔に書かれていた。
エンシェント・エルフ遺跡で思い浮かぶ場所は、カルとステアには一つしか無かった。
「って、危険指定されてる遺跡じゃねぇか! 子供が一人でこんな所に行ったら死ぬぜ」
「うわぁああん。ジーク死んじゃうヤダー!」「ヤダー!」
カルの言葉に驚き、フローラが泣き出した。それに合わせてダンゴも一緒に泣き出してしまった。
「どーどー。ああ、泣き止んでくれ」
「カル。馬では無いのだから……」
ステアは、彼等の目線に合わせしゃがみ込み、フローラとダンゴを抱き寄せる囁くように言った。
「大丈夫。私達に任せて置けばジークも見つかるわ」
「ほんと? ほんとにジーク帰ってくる?」
フローラが涙を流しながらステアに聞き返す。
「ええ。私達を信じて……」
「おねーさんキレイだから信じるー!」
「あの……俺は。俺は?」
カルが自分を指差し子供達に訊ねるが、完璧に子供達に無視された。時に子供は残酷である事をカルは知る。
「カル。エンシェント・エルフ遺跡に行きますか?」
「とりあえず、周辺情報を集めよう。もしかしたら近所で迷子になってるだけかも知れないだろ?」
「了解」
物語はこうして幕を開けた。
<続く>
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